もう10年以上乗っているビラーゴトライク。少し前に大幅カスタムをし、もはやイジるところが無くなっていたのですが…ここらで一発、かねてより憧れていたジョッキーシフトにしてしまおうかと。
ちなみに人にはビラーゴトライクと言っているものの、本当はYAMAHA純正品ではなく中国製コピーバイクのLIFAN250がベース。いわゆる中華トライクの括りに入る乗り物になります。
ジョッキーシフトとは?
今回は解説が目的ではないので、ざっくり感で。
正式には『ハンドシフト』と呼ばれる機構になり、通常であれば左足でおこなうシフトチェンジを、左手を使ってレバーで操作するもの。
ハーレーの古い車種などは純正でハンドシフト方式が採用されている場合も。
ハンドシフトのうち、ミッションから乗車シート後方に向けてシフトレバーを伸ばして操作する形式は『馬にムチを打つ姿』に見える事から『ジョッキーシフト』と呼ばれます。
従来のクラッチ位置(左手)では同時にシフトを操作する事ができなくなるため、クラッチは左足。フットクラッチとなります。
このフットクラッチにも「ロッカークラッチ」と「ノンロッカークラッチ」の二種類があり、「ロッカークラッチ」はシーソーのような機構。後ろを踏んでクラッチを切り、前を踏んで繋ぎます。クラッチを切った状態で足を離せるというのが利点。
これに対し「ノンロッカークラッチ」は自動車のクラッチ同様、踏んで切り、離して繋ぎます。構造がシンプルなので改造しやすいというメリットがありますが、ロッカークラッチと違ってクラッチを切った状態で足を離す事はできません。
徐行しながらの左カーブ時にちょっと停止したい時など、通常であればクラッチを握ってそのまま足をつけば良いのですが、ノンロッカーの場合はそのまま左足をつくことはできません(ニュートラルに入れる必要あり)。
それゆえにノンロッカークラッチは「スーサイドクラッチ(自殺クラッチ)」と呼ばれることも。
(厳密にはフロントブレーキを排除した車両がスーサイドクラッチと呼ばれるのですが、単純に「ロッカークラッチ=スーサイドクラッチ」という呼ばれ方が一般的)
作業開始
さてさて…では作業に入りますよー。
完全に自作でジョッキーシフト化する方も多くいますが、私は楽するためにキット購入。
ドラッグスターほどではありませんが、ビラーゴもこの手の専用カスタムパーツが出ていて助かりますなぁ。
価格は約3万円。
届いた部品は3点。
ちょっとした金具と、棒と、プラスチック玉。これで3万円です。
ボッタくりじゃん!…と言いたくなりますが、こういった受注生産のような製品を原価で考えるほうがナンセンス。
自分で作れば1万円でお釣りがきたでしょうが、手間と安心感を考えれば決して高くはないでしょう、たぶん。
一応『ボルトオン商品』として販売はされているのですが、そのままポン付けというわけにはいかず、やはり若干の加工が必要になりました。
ロッド部分
まずは『シフトロッド』を取り付ける部分。
ここのプラスチックのカバーがロッド付け根に干渉してしまいます。
まずはカバーを外して…
ディスクグラインダーで下半分をカット。
これでロッド部分はOK。
この程度ならばポン付けみたいなもんですな。
フットクラッチ部分
次はフットクラッチ部分。
まずは左ステップを固定しているボルトを外し、キットに入っていた『L字型のステー』を取り付けます。
ここもステーの形状が干渉していたので、同じくグラインダーで削りました。
シフトペダルはそのままクラッチペダルとして使用します。
作業写真が一気に飛んでいて申し訳ない…。手が非常に汚れる作業だったのでカメラを触りたくありませんでした…。
クラッチワイヤーをさきほどの『L字型ステー』に装着し、キットに入っていた『ワイヤーエンドパーツ』を使ってシフトペダルに取り付け。シフトロッドが付いていた部分にネジ固定できるようになっています。
しかしここのワイヤーの長さ調整が非常に時間がかかりまして・・・。
シートに跨り、実際の乗車姿勢で「どのくらい踏み込んで完全に切れるか・半クラッチの足首角度・走行時時のペダル角度」などを決めるのが非常に難しい。あまり深めにセッティングすると自然な姿勢でクラッチ全切りができなくなりますし、逆に浅いと足首の角度がキツくなる。
ワイヤーを切断するたびにワイヤーエンドをハンダ付けしなければならないのですが、切りすぎてしまっては取り返しがつかなくなるので・・・
少しだけワイヤーを切断して、エンドをハンダ付けし、ペダルに取り付け、座って足首の角度を検討し・・・・降りてまたワイヤーを少しだけ切断して・・・
の繰り返しで調整。ここだけで2時間以上かかっています。
文章で説明するのは難しいのですが・・・シフトペダルの形状のせいで均一なワイヤーの引っ張り感にはならず、一定の力(速度)で踏み込んでも「踏み込み始めはゆるやかに引っ張り、特定の角度から一気にグイッと引っ張る」といった感じになります。
ワイヤー受けステーとペダルも干渉していたので、この部分も少し削りました。
取り付け後の各部調整
クラッチペダルの戻りは左手操作時と同じ、すなわちミッション上部に付いているバネで引き戻す事になります。
そのままでも問題なく動作はするのですが、ハンドレバーを戻すよりもペダルを持ち上げるほうが力を必要とするため、そのままでは非常に心もとない。
それほど強いばねではないため、足で操作した際のペダルの踏み心地もスカスカして良くありません。
…というわけで、戻りの補助と踏みこみ感アップのため、スプリングを取り付けます。
金色のヤツが取り付けたスプリング。ステップとペダルを繋ぎました。
少々強すぎるか?と思うほど太く強力なスプリングを取り付けてみましたが、足で操作するとまだ弱い。そのうちさらに強いヤツと交換するとしましょう。
スプリングを取り付けたことで、クラッチを繋いで足を離した際にペダルが元の位置より上がりすぎる事も防いでくれます。
クラッチレバーが無くなった事で左手周りは非常にシンプル。
ここまできたらウインカーも移設して完全にスッキリさせてみるのも良いかも…。
ロッド頭には基本の黒いボールが付いていましたが、変更して日本刀グリップなんて取り付けてみました。通常よりもロッドが延長されて操作しやすくなったのは良いのですが、中二臭が漂っている気も…(汗)
試走行・使用感
交換後の試走、予想はしていたものの…死ぬほど乗りづらいったらありゃしない(笑)
フットクラッチの感触が全然わからないうえに、「無意識の操作」から「意識して頭で考えながら操作」に変わったのでやたらとモタつく。ご近所をぐるっと廻るだけで何度もエンストしてしまいました。
しかし車通りの無い場所で30分ほど練習してみると、意外にすんなりイケるように。
通常の二輪車であれば『半クラッチ中に左足が降ろせない』というのは危険が伴うと思いますが、トライクなので全く問題無し。倒れる事はないので左足はクラッチ操作に専念できます。
二輪でノンロッカークラッチ・ジョッキーシフトを運転している方はスゴいですな。わたしゃ万が一のことを考えると無理ですよ。
追記)
ジョッキーシフト化から約1年が経過。もう自由自在に操ることができ、運転操作もケタ違いに面白い。馬のケツを叩くようにバシバシとシフトチェンジしていく快感はたまらんですな。
乗車姿勢が変わったので、さらに攻めたスタイルにするため、ハンドルはロボハンに変更しました。